自分が野良犬のエサに???

もう40年も前のはなしですが、

子供の頃、ぼくの家の裏には

いつも野良犬の群れがいました。

 

体が暗い茶色でマズルが黒い、

漫画に出てくる典型的なカラーリング。

 

だいたい、5~6頭のグループで、

近所をうろつきまわっています。

 

時には飼ってるニワトリを餌食にしたり、

ゴミ捨て場の残飯をあらしたりして

民家とはつかず離れず暮らしていたようです。

 

ぼくが18歳まで過ごしたこの街は、

広島の県北、中国山地の真っ只中

人口1万人の田舎でした。

(世界遺産登録された民俗芸能が自慢です)

 

そんなのどかな環境ですから、

ウチの界隈の野良犬たちには

地域の人達と一定の距離を保って

暮らせる環境がありました。

 

昔はもっと野犬がいたようで、

近所の板金店のおじいさんは、

「昔は山に網を仕掛けて山犬をとってたもんだ」

と話してたのを聞いたことがあります。

 

つまり、動物愛護法もなく、

行政も野犬を野放しなので

住民が動いてた時代です。

(ウチの納屋にはトラバサミの罠がふつーにありました)

 

ある冬の午後、

学校から帰ってきたぼくはいつものように

裏の神社へ向かう参道で

友達と待ち合わせしてました。

 

全国的にはあまり知られていませんが、

広島の山間部は、

なかなかの降雪地帯です。

スキー場がいくつもあります。

 

待ち合わせしてた参道はカーブを含む200m近い坂道で、

雪が降ればみんなで雪を踏み固めて

子供だけのミニスキーパークを作って暴れまわります。

(う~ん、ナイスコース!)

 

その日も青い愛用のソリを引きずりながら

待ち合わせの参道に向かいました。

 

着いてみると、

日中の気温が低かったせいか、

前日の水分が見事に凍ったままで

どう見ても、

 

スーパー

デンジャラス

コンディション!

 

ツルツルカーブでは、

外側の石垣に激突する者が続出、

曲がりきれなかった友達の兄弟は、

2人乗りのソリごと3m下の竹やぶへ死のダイブ・・・

(生きてました)

 

無傷で下まで完走したヤツが

ヒーローになること間違いなしの状況!

 

こう盛り上がってくれば、

時間を忘れて暴れまわるわけですが、

さすがにあたりが薄暗くなって、お腹もすき始めると

1人、また1人と帰ってゆきます。

(親が迎えに来る家なんてありませんでした)

 

今でもはっきり覚えてますが、

僕はそうとう未練タラタラでしたが

帰ることにしました。

 

ですが、

もー遅いし、遠回りの正規ルートではなく

雪の積もった田んぼを渡って家の裏庭に出る

最短ルートを選ぶミスチョイス。

 

ソリ後のアドレナリンのせいか、

そこにはいつもヤツらがいる 「のに」 です・・・・・

 

ゲーセンも商業施設もない田舎集落でしたから

危険が伴う遊びは何よりも楽しいんですが、

時々、マジで命が危ない時があります。

 

この時も間違いなくそうでした・・・

 

 

自分の手が見にくくなるほど暗い田んぼを

半分位歩いてきたとき、

真っ白い雪の田んぼにうっすら

ヤツらの影が見えた気がしました。

 

あわてて後ろを振り返り

逃げるルートを確認しましたが、

戻るには来すぎていてムリ・・・

左にはヤツら、右はずーと田んぼ・・・

 

残された唯一の脱出ルートは、

まっすぐ前に進むあぜ道だけです。

 

このペースで歩けば

あと10秒ほどで左舷5mのヤツらと最接近。

 

できるだけ刺激を与えないよう

足の使い方や上体の動きを小さくしつつ、

目だけはしっかり奴らをロックオン。

 

ていうか、

ロックオンされてるのはこっちです。

 

 

ようやくヤツらの姿がはっきりしてきましたが、

意外にも緊張感のないご様子、、、

寝そべってらっしゃいます。

 

腐食の発酵熱でそこだけ雪が溶けたのか

ワラのうえにリラックスしておられます。

4~5頭でしょうか。(恐怖のあまり記憶が定かでない)

 

しかし、

寝そべりながらも視線は完全にぼくを追っています。

 

緊張状態の中では頭がネガティブに働いて、

 

「あいつら全部と戦えば100パー負けるな・・」

「なんで表の通りから帰らなかったんだ・・・」

「狂犬病にかかれば死ぬって聞いたぞ・・・」

 

そんな緊張の時間はゆっくり過ぎて、

家の裏庭の目の前まで来たとき、

「よし、あと10mをダッシュで逃げ切りだ!」

と思った瞬間でした。

 

野生に暮らすヤツらは鋭く反応して

一斉に立ち上がりました。

 

ヤツらはその頃のぼくの身長とあまり変わらない大きさで、

俊敏に動き始めたもんですから恐怖は倍増。

 

もー走るしかないと本能で悟り、

左手に青いソリのヒモをつかんでバタバタと、

(これだけは離すわけにはいかない武器です)

表層が凍り始めている30cm近い積雪の中を走りました。

時間にして10秒にも満たないダッシュでしたが

奇跡的にも安全地帯の裏庭に到着。

 

 

急いで家に駆け込んで窓から振り返ると、

ヤツらは途中で止まってこっちを見ていました。

 

裏庭にはじーさんやオヤジがいつもいて危険な場所で、

これ以上近づけないことを知ってるのが分かりました。

 

怒られることはわかりきってましたが、

案の定、母にお前はアホか!と叱られはしたものの、

犬をぶち殺せ的な雰囲気は

不思議なほどなかったように思います。

 

ある意味、

ヤツらは少し厄介な集落の一員的な存在だったのか・・・

 

そんなことがあってからも

ぼくは暗くなるまで遊ぶのをやめませんでしたが

もう、田んぼコースは封印しました。

 

ヤツらのエサになる恐怖は

もう味わいたくなかったからです。

 

 

P.P.S

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