クレームで、
積み上げてきた信用を根こそぎ無くします。
サラリーマン時代に経験した最悪のクレームは、
アクセルを戻してもエンジンが吹き上がり続ける
「オーバーラン」 と呼ばれるものでしたが、
(最悪、人命に影響します)
「今度から気をつけます。」
的な対応で解決する、
ごく軽いクレームもありました。
しかし、
軽度のクレームでも、
繰り返せば信用は完全に地に落ちます。
ですからクレームは、
内容を問わずあくまでゼロを目指すべきです。
そのために
日本の製造業が1番大事にしているのは、
クレームの正確で素早い原因究明です。
そのためにとても有効なのが今日のテーマ、
「なぜなぜ分析」 です。
(発案者は、TOYOTAの大野耐一氏で日本産業界の偉人です)
「わざわざ難しく分析するまでもない!」
と思う人もおられると思います。
クレームを出してしまったら、
誰でも自分なりの方法で
「原因はなんだろう?」と考えるからです。
しかしそこからは、
えてして決めつけや、憶測をもとにした答えが出やすく、、
そんな答えをもとにした対策は機能しませんから、
必ず同じクレームが起こります。
なぜなぜ分析は、
過去に経験したそんな痛い教訓をもとに
考案された考え方です。
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さて、
なぜなぜ分析は一種の「頭のトレーニング」です。
少し練習が必要ですが、
慣れてしまえば自然にできるようになりますからご心配なく。
まずは、
「なぜなぜ分析表」を用意しますが、
表といっても複雑なものではありません。
最上段にクレームの内容を書いて、
なぜそれが起こったのかを質問調で書き出し、
その答えを考えます。
出た答えをさらに質問調に書き直し
またその答えを考える。
それを3~5回繰り返し書き出すだけです。
*参考 http://www4.tokai.or.jp/advi-qc/p01.htm
では、今でもゾッとする、
ウチで発生したクレームを例に
なぜなぜ分析を解説します。
【クレーム内容】
トリミング中、ヨークシャテリアの老犬が
トリミングテーブルから転落して
下顎を複数箇所骨折。
病院に搬送後、即手術。
手術・入院治療費 → 28万円
固定客の喪失 → 12万円/年
風評被害 → 商圏地域に拡散
この事故がなぜ起こったのか、
何も知らない他人のような冷静さで
なぜ?なぜ?を繰り返してみてください。
なぜなぜ分析開始↓
【①なぜ下顎を骨折したのか?】
老犬で骨が弱くなっていた。
着地の姿勢をコントロールできずに顎から落下したため。
【②なぜ落下したのか?】
電話の設置場所が離れていて、
トリミングテーブル(地上1m20cm)の上に
ヨークシャテリアを残したまま離れた。
老犬で視力が弱く足も弱っていて
正常に立っていられず落下した。
【③なぜ正常に立てない老犬を放置したのか?】
正常に立っていられなくても電話応対の短時間なら
落ちることはないだろうと判断した。
1m20cmのトリミングテーブルなら
もし落下しても大したことはないと思った。
【④なぜ落ちないと判断でき、落ちても大丈夫と判断したのか?】
これまで何度も同じような老犬をケアしてきたが、
今回のような事故は起こらなかったから。
【⑤なぜこれまでと同じで事故は起こらないと判断できたのか?】
最悪の事故を想定していなかったので、
甘い判断をしてしまった。
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なぜなぜ分析で分かた根本的な原因は
「落下しないだろうという甘い判断」 です。
日常の仕事の中で起こった
偶然の事故ではないことが分かりました。
では、飼い主に対して
どんな報告をすればいいでしょうか?
「2度と再発させないため、この事故を強く心に刻みます」
的なことを頭を下げながら言えば
心の底から信用して下さるでしょうか?
結果は明らかです。
というわけで、
2度と事故を起こさないために3つの対策をしました。
【対策①】
子機電話を設置して
テーブルを離れずに電話応対できるようにした。
【対策②】
カット中は必ずチョーカーで固定するよう
各テーブルのアームに常備し、
オーナーが実践してスタッフにも定着させた。
【対策③】
事故の状況説明と根本的な原因、
事故後の対応の困難さなどを全員で共有するために
ミーティングを実施した。
3つの対策を実施してからは
同じクレームは発生しなくなりました。
しかし、
この事故の本当の解決にはなりませんでした。
いくら完璧な対策をしたからといって、
最愛のペットに怪我をさせられた飼い主の不信感は
簡単には戻らないからです。
5年後、
新しいワンちゃんをお願いしたいと言って来店され、
ようやく許してもらえたほどです。
起こってしまったクレームは取り返しがつきません。
しかし起こってしまったクレームの
本当の原因に防止策をとらなければ
必ず再発します。
再発を防止してクレームをゼロにするために、
なぜなぜ分析で頭の体操をすることは
とても意義のあることです。
P.S
ちなみに、「なぜなぜ分析」 の目的は
クレームを起こした人の個人攻撃ではありません。
あくまでも2度と同じ失敗を起こさないためのものです。
問題の原因を繰り返し何度も考えることで
その思考パターンを身につけます。
そうなると、
器具やスタッフやサービス内容に変化があるときなど、
起こりそうな問題を事前に予想できるようになります。
それと、なぜなぜ分析は、
できる限りノートに書いて行ってください。
最初のうちは何度も上の答えを見直しながら
進めることになるからですが、
手で書くことで、理解はより深くなって
マスターする早さも増す効果があるからです。
複数名でも、たとえ1人でも、
紙の上や、ホワイトボードに記録を残しながら
根本の原因を冷静に追求する姿勢で進めて下さいね。
次回は、
「内段取り」 についてお話しようと思います。
クレーム発生!すぐ、「なぜなぜ分析」。
P.P.S
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