人間が始めて使った洗剤は、
羊の肉を焼いた灰から偶然発見された
原始的な石鹸でした。
紀元前3000年頃のローマだったそうです。
そこから人類が合成洗剤を発明するまでには
意外な程、長~い時間が流れています。
最初に発明したのはドイツ。
石炭から世界初の合成洗剤を作ったのは、
なんと、1917年でした。
(洗剤といえば5000年近く石鹸だった)
当時のドイツは、
第一次大戦で連合国から経済封鎖を受けていました。
(1914~1918年)
第一次世界大戦の頃、
ドイツで使われていた石鹸は食用の脂から作っていましたが、
海外からの輸入が封鎖されて石鹸の原料が不足していました。
つまり、
食用脂に頼らない洗浄剤を開発する必要に迫られました。
そして、世界初の合成洗剤を発明したわけですが、
洗浄力がイマイチだったので
戦後、食用脂が輸入できるようになると
再び石けんを使うようになってしまいました。
それから10年経った1928年、
やはりドイツのベーメ社が、
今度は天然の動植物油脂を使って
合成界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩(AS)
を開発しました。
こんどのASは、
洗剤としての性能がとても良いものでした。
1932年にはアメリカのP&G社などがASを使って、
家庭用合成洗剤「ドレフト」を発売しました。
その翌年1933年、
再びドイツのI.G.社によって、アルキルスルホン酸塩(SAS)と
アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)が開発されました。
これらは、動物性油脂を必要とせず、
石炭や石油から作られる実用的な合成洗剤の第1号となりました。
(画像はイメージ)
そのころ日本では、
1933年にドイツから技術を輸入して、
合成界面活性剤、ASの製造が始まりました。
国内の家庭用合成洗剤第一号は、
1937年(昭和12年)に発売された、中性洗剤「モノゲン」です。
そこから十数年後、第2次世界大戦が終わり
やがて急激な経済成長の1950年半ばになると
電気洗濯機が一般家庭に普及して、
合成洗剤は急速に使われるようになりました。
(画像はイメージ)
1950年代中頃には粉末状の合成シャンプー登場、
1959年(昭和34年)には台所用洗剤の発売、
1960年代に入ると住居用洗剤も発売されました。
当時、回虫が多かったこともあり、
食器だけでなく野菜や果物も
洗剤を使って洗う習慣が普及しました。
(ぼくの親の世代は、野菜は洗剤で洗えと学校で習いました)
すごい勢いで使われ始めた合成洗剤は、
1963年(昭和38年)に、
とうとう石けんの生産量を上回りました。
この頃、日本の川などで大量の泡が発生していました。
これは、成分が生分解されにくい(ハード型)ことが原因だったので、
全メーカーで洗剤の「ソフト化」が進められました。
1971年(昭和46年)には、ソフト化率が97%にまでなり、
社会的にも一段落という雰囲気が漂っていました。
しかし、
今度は河川、海の富栄養化が問題視されました。
(1972年(昭和47年)には瀬戸内海で赤潮の大発生など)
メーカーは間髪入れず洗剤の無リン化に取り組み、
1973年(昭和48年)には第一号の無リン洗剤を発売、
現在、家庭用洗剤はほぼ100%無リン化されました。
「モノゲン」発売から約70年、
産業規模は拡大して、2013年の製品販売統計では、
8千億円を超える産業に成長しました。
(日本石鹸洗剤工業会(JSDA)発表)
皮肉なことに、
合成界面活性材が生まれて、
ここまで普及することになった背景には、
2回の世界戦争があります。
ドイツも日本も敗戦していて、
(第一次世界大戦では、日本は圧勝してます)
両国とも、戦争賠償として数百兆円を払っています。
空襲や戦闘で生産インフラは破壊され
経済活動がほとんど止まってしまいました。
(東京大空襲↑)
(ドイツ・ドレスデン爆撃↑)
国力を取り戻すためには
従来の産業を復元するだけではなく
新しい産業を育てることが必要でした。
(安倍内閣の第3の矢みたいです)
合成洗剤はこうした時代の要求に応えて
急速に産業化されていったわけですから、
環境破壊や、健康被害に充分配慮することが
難しかったんですね・・・。
P.P.S
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